自分達が見つけた価値は相手にとっての価値ではない

価値あるものを誰かに提供する。

これは社会が成り立つ基本原則です。

もし価値のないものを提供して利益を得るならそれは詐欺に他なりません。

しかし、どこまでを価値あるものとして判断するかはなかなかに難しい。

 

漫画で「闇金ウシジマくん」という作品があるんですが、その中で登場人物の1人がこのようなセリフを言っています。

「俺らが売るものは金儲けの方法じゃねー。金儲けができそうな雰囲気だ」

 

ここで売られるものって価値あるものですか?

普通に考えたら価値のないものですよね?でも購入する人がいるんです。それは購入者が価値のあるものだと誤解したからです。

 

しかし、同時にこうも言えます。購入者は金儲けの方法よりも金儲けができそうな雰囲気に価値を見出した、と。

いやいや、詐欺だろ。ネズミ講認めんのか?

そう言われると別に詐欺を認める気は一切ないですよ。

ただ、価値は人によって完全に変わってくるのも事実です。

 

軍艦島って呼ばれる場所があります。

長崎県の端っこにある島で端島っていう島です。

ここ、通称が物々しいんで戦時中由来の島みたいに思う人もいるらしいんですけど、二次大戦が終わってから発展した炭鉱街なんです。

元は岩礁だったものを鉄筋コンクリートで保護しつつその上に街を作り石炭を採掘していたんですが、結果できた島の形が戦艦「土佐」に似ていたので軍艦島と呼ばれるようになったんです。

 

この軍艦島は既に島民が誰もいません。石炭の採掘が完了し役目を終え、今では完全な廃墟群です。

そんな廃墟群ですが、現在は観光スポットになっています。

長崎港からクルーズが出され、島を周遊したり上陸して見学するツアーがあります。

 

日本の高度成長期にも関わる島で、日本初の鉄筋コンクリートによる高層建築物が作られた街、という歴史的に価値ある建物である事は事実です。

他にも建築物自体が真水を確保しにくい環境だったため、海水でコンクリートを溶かして使用したりと面白い点はいくつもあります。

私も観光に行って凄く楽しかったです。

クルーズで案内してくれた方々ありがとうございました。

 

ですが、それを抜きに考えたらどうでしょうか?

ただの廃墟群です。

鉄筋コンクリートの廃墟とか珍しくもないでしょう?

しかも、建物自体は老朽化しておりいつ崩落してもおかしくない。場所も辺鄙が過ぎており、船を使わないと上陸できない上にその上陸も水位が0.5m上がっただけでできない。

 

ここに価値を見出す事はできないのでは?

島自体にとっても石炭を掘り尽くし役目を終えております。

しかし、この島には価値があるのです。

観光業からすれば島の歴史という価値が提示できます。

価値を受け取って側はどうでしょう?

 

観光客は島の歴史に価値を感じていると思います。同時に普段は行かない場所を案内してもらえるという希少性にも価値を見出しています。

 

他にも価値を見出した方々がいます。

この島は映画「007」や「進撃の巨人」のロケ地として使われました。

これは廃墟となった高層建築物という景観に価値を見出されています。

研究でビルの崩壊を食い止める研究をする方が注目したりと様々な価値が見出されています。

 

歴史的な価値を提供したい人にとって希少性やロケ地、研究対象は直接的には関係しません。

しかし、それらが結果として軍艦島という場所をより有名にし、島の在り方が存続する事に繋がっていくわけです。

 

あらゆる物事には様々な価値があります。そのうちの一面を見つけてもそれがそのまま伝える相手への価値となるわけではありません。

自分の見出した価値として受け取ってもらうためには、その価値を理解できる知識を伝える事が大事になります。

 

そして、自分の見出した価値以外を見出した人に自身の価値を押し付けるのではなく、共有できる価値を共に学びあう事が結果として価値をより深めていく事に繋がるでしょう。